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HN:
ジュナー1号&2号
性別:
非公開
自己紹介:
【2号】
殉教者。
マンガとアニメが好物。
「三次元の女には興味ありません」と強がる。
小さい子が好みであることは誇り
活動資金をどうするかが悩み


【1号】
変人。
創作、編集。
2ちゃんねるスレッドまとめはリンク先のブログに移転しました。


御意見等ありましたらこちらまで
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だうも2号ですお。
4月中旬となりましたので予告通り投稿します。
次は4月下旬~5月上旬を予定しております。

第1筆は
こちら

それでは~



第15筆


昨日勉強した記憶がほとんどないことに、俺は幾許かの危機感を覚えた。
ちなみにテストの内容は一年時で習った範囲だ。
小テストにしては理不尽なくらい広い。
ノートから不名誉なテスト用紙を取り出す。
最低でも前回の復習はやっておかねば、同じ轍を踏むことになるだろう。
改めて問題を見るが、まずどうして間違っているのかがわからない。
ノートと教科書、参考書を多重展開する。
だがこれらも俺には武器になり得るか疑問な代物である。
「ええと、ここがこうなるからこっちは…」
独り言をブツブツと呟き、数字と睨み合う。
今は二重根号と戦闘中である。
何故√の中に√があるのか、未だ理解できない。
数学は覚える余地がないのか、明確な拒絶反応を起こしている。
きっと先天的なものだろう、ということにしておく。
開始早々にして暗雲が漂い始めた。
去年の補習の日々が脳裏をよぎる。
「いかんいかん、あんなのはもう耐えられん」
あの地獄を回避するためには今を頑張る他に道はない。

勉強が軌道に乗り始めた時の事だった。
「衛慈!」
ドアが乱暴に開け放たれ、紫が騒々しく乱入してきた。
「わらわは所在無く、何ぞをかしきことはあらざるか」
部屋の主としては不愉快極まりない。
解きかけの計算式が一瞬にして脳から消えてしまった。
「ねぇよ。大人しく珠と遊んでろよ」
俺は不機嫌を露わにし、紫をぞんざいに追い払う。
紫を構ってる暇など今の俺にはない。
補習決定の暁には、こいつらを帰す方法を探せなくなる恐れがある。
ずっと続くわけではないが、だからといって受け入れるつもりはない。
お互いのため、なるべく早く元の世界に戻してやりたいものだ。
「珠の影無し。故にわらわと戯れ」
こいつの護衛という設定ではなかっただろうか。
もうすぐ一週間になるが、珠のことは未だによくわからない。
突然消えて、かと思えば背後に立っている、なんてことは珍しくない。
案外紫が見落としているだけかもしれない。
紫を部屋に残し居間やキッチン、風呂にトイレを探したが、何処にも珠の姿は見当たらない。
万が一トイレにいたら逆に危なかったが。
だがいないことは紛れもない事実であった。


「本当にいないな…行き先は知らないのか?」
自分の部屋に戻った俺は、珠の行きそうな場所を紫に尋ねた。
「心得難し。知らば斯様な処に来ぬ」
「嫌なら来るなよ…」
俺は腹が立つを通り越して呆れた。
こいつのせいで勉強が振り出しに戻り、珠を探して時間を浪費したのだ。
そこまでしたのにここまで言われる筋合いはない。
やはり貴族とはこうやって下々の人間を見下すものなのか。
紫を無視し椅子に座り、勉強を再開する。
ふと見ると自分がどの問題を解いてたかすら忘れてしまった。
ペンを握る腕に紫がしがみついてくる。
「邪魔すんな。俺は暇じゃねぇんだよ」
「わらわは事無く、故に暇持て悩みたり」
こっちは際限のないやること…勉強があるのだ。
「わがまま言うな、勉強させろっつの」
俺は紫の腕を振りほどき、机に向き直る。
立ち尽くす紫を横目に、数字と向き合う。
あんなことを言われてまで相手してられるか。
俺は悪くない。


「…ったく、しょうがねぇな」
ばつが悪い俺はペンを置き、開いていた冊子を閉じる。
あまり邪険にするのも寝覚めが悪い。
相手は子供だ。いちいち気にしてたらキリがない。
言語遣いはこれから矯正していけばよい。
俺は机の引出しを開け、手を突っ込みごそごそと漁る。
「えーと、遊べそうなものは確かこの辺に…ってか汚ねぇなおい」
中には昔流行っていたカードや、気分で取ったままのガシャガシャが無造作に敷き詰められていた。
その奥から長方形のプラスチックケース、『トランプ』を俺は発掘した。
これくらいしか紫と遊べそうなものはない。
「…これしかないけど、いいか?」
トランプをかざし、紫に承諾を求める。
「其は如何に戯るのか」
「この絵札を使っていろいろ遊ぶんだ。遊び方は何通りもあるんだぞ」
「左様か、然あらば易しきものを教うれ」
どうやら合格を取り付けられたようだ。
これで難癖つけられていたら紫を閉め出していたことだろう。
「二人でやるのも寂しいしな…すずも呼ぼう」
俺は無造作にもベッドに放り投げられた携帯を手にした。


「トランプなんて久しぶりだな」
カードを切りながらぼそりと呟く。
「そぉ?あたしはたまにやるよ」
一人でトランプとは、一体何をするのだろう。
タワーでも作るのだろうか。
すずがカードを慎重に積み上げている姿を想像して少し笑えた。
それか一緒に遊ぶ相手でもいるのだろうか。
そうだとしたら一体誰なのだろう。
まぁすずが誰と遊んでいようが俺には関係のないことだ。
俺には関係ない。
それが例え男でも…。
「さて、わらわは何すればよきにや」
「は?!そ、そうだな…簡単なババ抜きにしよう」
どうやら周りの音が聞こえなくなるほど考え込んでいたようだ。
俺の予想外の反応に紫がたじろいだ。
やはりトランプといえばババ抜きだろう。
大富豪なども盛り上がるが、紫相手じゃ説明に手間取ってゲームどころではない。
切り終わったカードを各々に配る。
「数が同じ二枚が揃ったら捨てていくんだ、で」
俺は自分の手札の中から揃った二枚を取り出し場に捨てた。
「最後までこれを持ってた奴が負けだ」
そう言ってケースを開け、残した一枚を紫に見せる。
「此のことか」
そう言って紫が自分の手札から同じ絵柄のカードを見せた。
出すなよ。
「まぁ上手く回してくれ、んじゃやるぞ」
俺がすずの手札から一枚引き、戦いの火蓋は切って落とされた。
この後、陰惨な争いが繰り広げられるとは…誰も思っていないし起こるわけがない。


もう何ゲームやったのだろう。
戦いは一進一退の攻防を見せた。
俺が、すずが、紫がカードを引き合い、手札を減らす。
紫も何回かあがり、蓋を開けてみると勝負は割と互角だった。
「揃いたり!」
チビっ子が叫び、意気揚揚と二枚のカードをベッドの上に放る。
ちなみにベッドにはすずと紫が座り、俺は机から椅子を引っ張って座っている。
手札が減ってご機嫌の紫。
紫は不機嫌そうな表情をしている時が多い。
ちゃんと笑うと年相応に可愛い。
「どうしたの?衛慈の番だよ」
すずに言われて我に返る。
危ない危ない。変な顔をしていなかっただろうか。
気を取り直してカードを引く。
ドロー!モンスターカード!
老婆が禍禍しい笑みを浮かべ、厳然と俺の手中にいる。
まさに怪物を引いてしまった。
だが表情は決して崩してはならない。
俺が持っていないよう、振舞わねばならぬ。
そして油断させて引かせるのだ、ジョーカーを。

「あーがりっ!」
一番に抜けたのはすずだった。
そしてジョーカーは依然として我が手中にあったりする。
「おぬしよ」
紫が手札を選ぶ手を止め、何かを言わんとしている。
「何事か賭けぬか?」
「ほほう、大した自信だな。それじゃおまえは何を賭ける?」
「そうじゃの、わらわが勝つならば…」
伸ばしていた手を引き戻し、紫が考え込む。
やがて思い至った紫は、人差し指を俺に突きつけた。
「わらわを『姫』と呼べ。『おまえ』という名は礼無し」
人の顔を指差しておいて失礼とか言うな。
「これは尚のこと負けるわけにはいかんな」
姫はもっと高貴で美しい『女性』と相場が決まっている。
こいつをそう呼ぶのは珠で十分だ。
その珠が役目をきちんと果たしてないから、俺達はこうして貴重な時間を奪われているのだが。
「俺はだな…」
紫にとって屈辱的なものを要求しよう。
それほど、紫を姫と呼ぶことに抵抗がある。

何も…浮かばない。
というのも、紫に突きつけていいものがないのだ。
家事や買い物は論外、逆に行かれては俺の精神衛生上よろしくない。
それでは俺も呼び方を変えてもらうのはどうか。
向こうが姫ならこっちは…『殿』だろうか。
俺は殿なんて呼ばれてもちっとも嬉しくない。
いろいろと制約がありすぎて自由に決められなかった。
「とりあえず俺は後で考える」
面倒事は後回しにすることにした。
勝ってからじっくり考えるとしよう。
俺と紫、二人の間の空気が張り詰めていく。
手札は俺が残り二枚(ジョーカー含む)、紫が一枚。
俺に分が悪い形で勝敗を決する場面が来てしまった。
紫のターン!
「此でわらわが揃へば勝ちなり」
口の端を吊り上げ、意地の悪い笑みを向ける。
何故俺がこんな小娘に追い詰められねばならんのだ。
そしてこういう時に限ってどうしてすずはあがっているのだろうか。
「そういうのは勝負が決まってから言ったほうがいいぞ」
俺はお返しとばかりに諦めの悪い笑みを浮かべた。
カードを背中に回し、自分でもどっちかわからなくなるくらいによく切る。
確率は50%。
ここを乗り越えれば俺にチャンスが回ってくる。
逆を言えば乗り越えられぬ者に勝利は掴めないということだ。


「ささ、姫の番ですぞ」
俺は乗り越えられなかった。
そして約束通り、姫と呼ぶ屈辱が待っていた。
男に二言はない。屈辱だろうが約束は守る。
「騒がし、暫し黙れ」
あの勝負は俺達の身分を一変させた。
今や紫にとって俺は珠と同等かそれ以下である。
呼び方で人はここまで変わってしまうものだと、肩書社会の片鱗を垣間見たようだ。

「ふぇぇ、もうこんな時間かぁ」
すずが馬鹿に大きな欠伸をし、潤んだ視線の先にあった時計に目をやる。
気がつけば夜も更け、子供でなくても眠くなる時間になっていた。
我が家のお子…いや、お姫様もベッドで船を漕ぎ始めている。
「そろそろお開きにするか」
俺は散らばったトランプをケースに仕舞い、ガラクタに埋もれた小部屋へと戻す。
再び開かれるその時まで眠っていてくれ。
今日はありがとう。


「呼んでくれてありがとね~楽しかったよ☆」
「礼を言うのはこっちだ。急に呼び出して悪いな」
「気にしなくていいよ?紫ちゃん可愛いし、それに衛慈も楽しそうだったから」
すずにもわかるほど俺は楽しそうにしていたのか。
あんな風に遊ぶのは久しぶりだ。
そう言われると楽しかったのかもしれない。
「それじゃ、また明日ね☆」
大きく手を振ってすずは裏の家へと帰っていった。
「久しぶり、か…」
すずを見送り、俺は開けっ放しの玄関に向き直る。
ふと、背後に何者かの気配を感じ、俺はすずが去った反対の方向へ振り返る。
ゆっくりと女性らしき人影がこちらに歩いてくるのが見えた。
気配の正体は珠だった。
しかしいつもと様子が違う。
どこか憔悴しているような雰囲気さえ感じ取れる。
そもそも彼女はほとんど気配を感じさせない。
珠は数メートルのところでようやく俺の存在に気付き、はっと顔を上げた。
彼女と視線が交錯する。
「こんな時間にどこ行ってたんだ?」
問いただすべきか考えあぐねたが、その時の俺は聞かずにはいられなかった。
言及したいわけではない。
いつもと違う様子に戸惑い、心配に思ったからだ。
町の静けさに溶け込んでしまいそうな沈黙。
俺に話す気は無いらしい。
「紫が心配してたぞ」
何も言わずに俺の脇を通り過ぎようとしていた足が止まる。
「姫が、私を?」
振り返った珠の顔には驚きが貼り付けられていた。
「おまえがいなくて寂しそうだったぞ。お陰で遊び相手にされちまったよ」
無駄を承知でこの場を和ませようと軽口を添えた。
「…姫は無事か?」
「?あぁ、遊び疲れて寝ちまったよ」
しかも俺のベッドで。
「そうか、ならばよかった」
そう呟くと、珠は踵を返し玄関へと再び歩き出した。
「お、おい、何か調子悪そうだけど大丈夫か?!」
俺は引き止めようと手を伸ばした。
その手が乱暴に打ち払われる。
俺が紫の手を振りほどいたことが温く感じれるほどの強さだった。
「私に構うな!」
宵闇を引き裂く怒号、続く再びの沈黙。
天に浮かぶ月が俺達を静かに照らす。
沈黙を破ったのは意外にも珠だった。
彼女は家へと駆け込み、奥に消えていった。
まるでこの場から逃げるかのように。
「俺、悪いことでも聞いたかな?」
一人、誰に求めたのかわからぬ問い。
後ろを通り過ぎる自転車の音で我に返るまで、俺は家の前で呆然と立ち尽くしていた。


状況が飲み込めぬまま、俺は部屋に戻ってきた。
そんな事を知る由も無く、すやすやと寝息を立てて紫がベッドを占拠している。
「おまえは気楽でいいよな…」
俺は大きく溜め息をつき、起こしてしまわないようにそっと毛布と布団をかけた。
気持ちよさそうに眠るその顔に、俺は何も言えなくなってしまった。
寝顔は日常がどんな表情であろうとやはり子供だ。
「ってか、俺寝るとこないじゃん…」
これは寝ずに勉強しろというお告げだろうか。
俺は精神の続く限り数学と立ち向かうことにした。



第15筆 終
続きます。

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Lysandraさん / 2009/04/26(Sun) / URL
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