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HN:
ジュナー1号&2号
性別:
非公開
自己紹介:
【2号】
殉教者。
マンガとアニメが好物。
「三次元の女には興味ありません」と強がる。
小さい子が好みであることは誇り
活動資金をどうするかが悩み


【1号】
変人。
創作、編集。
2ちゃんねるスレッドまとめはリンク先のブログに移転しました。


御意見等ありましたらこちらまで
malice-galaxy@excite.co.jp
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八月は全然更新ならず…。
何やってんでしょうね…。
私生活荒れ放題の迷走中です。
創作を頼りに生きていますお。

第1筆はこちら




小高い丘。
眼下には見慣れた街。
そこはまるで別世界のようで、『僕』はここからの眺めが好きだった。
丘一面を包む緑の中、誰かがいる。
何故か顔だけに靄がかかっていてよく見えない。
白いフリルのついた服と小柄な身長が女の子だということを教えてくれる。
だけど、まったく知らない人間じゃなくって。
でもどうしても思い出せなくって。

彼女の小さな手は薄紫色の花を握り締めていた。
あまり見ない花だったので『僕』はそれが何か知りたかった。
「綺麗な花だね」
顔は見えないはずなのに、『僕』には彼女が微笑んだのがわかった。

突然視界が大きく角度を変える。
世界が傾いたかと思ったが、違かった。
俺がいつの間にか地面に倒れ伏していたのだ。
少女の姿が段々と遠のいていく。

いつもここで邪魔が入ってしまう。
この続きはいったい何があるのだろうか…。
それともこの先には何も無いのだろうか…。

今回もその先に辿り着けず終いらしい。
少女の姿は世界に吸い込まれるように消えていってしまった。

どうしてだろうか。
その光景に俺は何故か悔しいと思った…。

 

カーテンの隙間から差す光。
いつもと違う眩しさは今がもう朝でない事を告げている。
誰も起こす義務が無いから休みの日は10時くらいまで起きない。
ベッドの上の時計に目をやると、日曜の昼近くを示していた。
せっかくの休みだ、もう少しだけこの温もりを享受していたい。


…休み?

「そうだ、死んだんだっけ…」
自称平安人を保護し、誰かに襲われて俺は絶えた。
17年間の、大して中身のない人生だった。
まだやり残したことがある気がする。大量に。
やってたゲーム、アイテムコンプしてない。
冷蔵庫の生モノ、片付いてない。
燃えないゴミ、溜まってきたから捨てに行かなくては。
あーとそれからそれから…。


ってそうじゃねぇ。
そんなことはどうでもいい。
死後の世界というのはこんなものか?
生前と何も変わってない。
まるで生きているみたいだ。
でもあのとき…確かに死を垣間見た気がしたはずなんだが。

ふと体にかかる重たい感触に気付く。
体を起こすと、少女が俺のベッドの傍らに伏していた。
「こいつ…」
小さな寝息が聞こえる。
俺は彼女の頭をそっと優しく撫でた。
腰まであるその黒髪。
少し疲労が残る幼い顔。

感覚があるということが俺にまだ生きているという事実を教えてくれる。
生きている、それを純粋に嬉しいと感じる。
だがそれだけではない。
「姫、か。こいつは一体何者なんだ…」
この疑問も未だ残されているということだ。


突然部屋のドアが開かれた。
一瞬にして緩く流れていた空間が破られる。
現れたのはあの女…俺を襲った張本人だ。
どうして俺の家にいるんだ?!

女がゆっくり、しかし確実に近づいてくる。
忌々しい脇腹の激痛が甦り、緊張に汗が噴き出す。
どうにかしようと寝起きの脳をフルにぶち回す。
そんな俺を余所に、女の腕は何かを抱えていた。


「もう昼だ。冷めぬうちに食せ」
料理を乗せた盆を渡し、女は短く言い放った。
既に彼女の意識はベッドの紫へと向いている。
紫の体を揺らし、起こす。
「姫、起きてくださいませ」
「む…朝か…」
もう朝という時間帯ではないが。
眠い目をこすり、姫がお目覚めだ。
「姫、姫のお食事は下に用意してございます」
俺に対するのとはまったく違う口調。
「うむ…然らば参らむ」
紫は未だ重そうな足取りで部屋を後にした。
階段踏み外したりしないだろうな…。

俺と女が部屋に残された。
部屋を静寂が包む。

俺は料理に口をつけることを躊躇っていた。
仮にも、いや確実に俺を襲った相手だ。
俺を助けるとは思えない。
これに何か入ってるかもしれん。

「安心しろ。毒など盛ってはおらぬ」
俺の思考でも読んだのだろうか。
女はそう呟いた。
俺を油断させるつもりか…しかしこれで信用するほど間抜けじゃない。
「…信用に足る証拠はあるのか?」
口端に笑みを浮かべ彼女に聞き返す。

「信用される必要などない」
返ってきた言葉は彼女らしいものだった。
冷たい言葉と眼光。
それはまるで感情が無いかのようにも取れる。
深き沈黙。
やがて先に口を開いたのは女のほうだった。

「嫌なら自分で用意するがよい。『できれば』だが」
そう残して女は部屋を出た。
最後の言葉が気になる。

さてどうしたものか。
食うべきか食わざるべきか、それが問題だ。
賢者の選択が試される。

「…食ってから考えるか」
死んだら考えられないが。
俺も男だ。
ここで退くわけにはいかない。
こんなスリリングな食事をする機会は滅多にない。

そういえば自分以外の料理は久しぶりだ。
これが最後の食事とならないように願い、口をつけた。

「…普通だな」


食べたら完全に目が覚めてしまった。
というか毒が入ってるかどうかが気掛かりで二度寝なんて気分じゃない。
それを確かめるべく下に降りる。
流しにはあの女が立っていた…早速お出ましだ。
目が合って一瞬後退りしたが臆してばかりいられない。
いつまでも蛇に睨まれた蛙でいるつもりはない。
そもそもここは俺の家だ。
どうして自分の家で怯えなくてはいかんのだ。
家主だぞ控えおろう!なんてな。
今度は絶命させられるかもしれないので刺激するのはやめておこう。
あえて刺激する蛮勇はまたの機会にしよう。

「これ…ご馳走様な」
たとえ俺を殺そうとした女であろうと、料理に対しては感謝する。
短くも俺は感謝の意を伝えた。
あぁ、これが遅効性の毒とかだったら撤回する所存だ。

女は僅かに驚きの表情を浮かべ、俺へと視線を戻した。
「臆して食さんと思ったが…」
ビビって箸をつけないと思ったのか。
どうやら侮られていたようだ。
「出された物は残さない主義でな」
我ながら上手い言い回しをした。
俺の言葉に反応せず、女は食器を流しに置いていく。
「ついでだ。私が洗っておこう」
「あ、あぁ…悪いな」
片付けを任せ、なんとなく居心地が悪い俺は紫のいる居間へと向かった。
「む、起きしか」
食後で呆けた顔の紫が振り向いた。
「もう昼だけどな」
俺は皮肉で返し、テーブルを挟んだ正面に座る。
お前より先に起きていたんだが…まぁいいか。


「なぁ…あいつは一体何者なんだ?」
本人に聞けばいいのだが、あまり関わりたくない。
何が地雷かわからない今、下手なことを聞いて刺激してられん。
紫からあの女のことを聞き出すほうが安全だ…たぶん。

「彼奴は珠なり。わらわのやんごとなき友達ぞ」
タマ?
変な名前だ。
ちなみに鈴のついた首輪はしていないし白猫でもない。
こいつの友達ってことはおそらく平安の方だろう。
「それだけか?」
「うむ…何ぞありしか?」
何かあるかだと?
大有りだ、と言いたいがここは呑みこんでおくことにした。
「どうしてお前の友達は攻撃してくるんだよ」
俺の知り合いには攻撃してくるような輩などいない。
そんな奴と仲良くなるはずもない。
こないだのも傷害で立件できるのではないだろうか、と一瞬考えた。
「さぁ…おぬしが怪しき者にありけむや?」
「酷いことを言うね君は…」
子供は素直が一番だが、流石に腹が立つ。

「まぁいいか。んでどうしてあれは俺の家にいるんだよ」
向こうが気にしていない以上、この話は不毛だ。
ガキの言葉にいちいち噛み付くほど俺の精神年齢は低くない。
しかし珠まで匿った覚えは無い。
こいつだけでも充分面倒なのに、これ以上厄介を抱え込んでは俺の生活が崩壊する。
もっとも既に崩壊しているかもしれない。
「さぁ…珠に聞いてみればよいではないか」
ぐぅ。
それが嫌だからこうしておまえに聞いているんじゃないか。
安全ではあったが有効か疑問が残る選択だった。

「私は姫に仕えし身」
いつの間にか後ろに珠が立っていた。
動く気配を感じなかったのは気のせいではない。
「おまえ、いつの間に…」
「姫をお護りすることは私の使命だ」
SPみたいなものだろうか。
こんな奴の護衛とはご苦労なことだな…と心の中で呟く。
って友達じゃないじゃん。
お互いの認識に齟齬があるようだ。
まぁ立ち入る気もないのでこの疑問はこれでお終いにしておく。


しかし休日のテレビというのはまともな番組がやっていない。
どこのチャンネルに回しても旅番組。
かろうじて面白いのは『どれでも査定団』くらいだ。
偽物で依頼人のプライドがズタズタになるのがこの番組の醍醐味だ。
少なくとも俺はそれ以外に見る価値を見出せない。


「や、時におぬしよ」
紫が何かを思い出した様子で俺を呼ぶ。
何故だろうか、これは嫌な予感がする。
俺のゴーストがそう囁く。
「どうした?」

くい、と紫が俺の袖を引く。
その仕草に少しドキッとしたかもしれない心情はなかったことにしよう。
俺にはそういう趣味はない。

「いざ、わらわを外に」

俺のゴーストは優秀だった。
ほれ見ろ、ロクなことじゃねぇ。
「何でそうなるんだよ」
「出かける約束をしたではないか」
あぁ…そういえばそうだったっけ。
とても面倒だと思っている俺がいる。
確かにそうは言ったものの、連れていく場所なんて思い当たらん。
そもそもあれはあの場を逃れるための口実だ。
本気で連れて行くなんて考えているはずもない。

しかしこれは困ったことになったな…。
どうにかこの面倒を避けようと、脳を回転させる。
俺は自分が何と言ったか思い出す。
あのとき…。

「フヒヒ」
俺は口端を釣り上げ、見なくてもわかる気持ち悪い笑顔を浮かべた。
「な、なんじゃ…気持ち悪いのう」
そんな俺を見て紫が後退りする。
うむ、掴みは悪くなかったようだ。
「残念だがあの約束は失効した」
「なっ…!」
紫は言葉を失い固まってしまった。

俺はあのとき『明日休みだから』と言った。
あの日の明日は土曜日、そして今日は日曜日。
つまりもうその義務は無い。
この週末も残り半日。
休日らしいことなど何一つしていない。
俺の休日は忙しいのだ。

「お、おぬし…左様な偏固を申すか」
紫は相当ご立腹かと伺える。
これは怒るのも無理はない。
客観的に考えると理不尽極まりない理由だからな。
もし逆の立場だったら俺も同じ気持ちになるだろう。
だが俺は引かない。男には引けないときがあるのだ。
ただ面倒なだけだが。
「屁理屈って…殺されかけたんだからもう少し休ませろって」
こいつらに巻き込まれて死にかけたんだ。
居候に振り回されるのは御免被る。
休日くらい堂々と自分のしたいことをするのは至極当然だと思う。
「というわけで今日は家で過ごす。また今度な」
紫には少し悪いが今日は遠慮してもらおう。


紫はしばらく考え、何かを思いついたように口を開いた。
「然らば珠、共に出掛けむ」
「私で宜しければ」
「んなっ…!」
思わず紫と同じリアクションをしてしまった。


「ちょ、ちょっと待て!」
見過ごせないと判断した俺は慌てて二人に割って入る。
「何ぞあるか?」
一方、発言者は事の重大さをまったく理解していないらしい。
「大有りだ!こいつを連れてったらおまえらの歩いた跡が死体通りになるだろうが」
俺は躊躇うことなくそう答えた。
一歩間違えると刺激しかねないが…今はそれどころじゃない。
こいつは見境なく周りの人間を攻撃する恐れがある。
「失敬な…まるで私が殺人鬼のようではないか」
何か違うのか、と言いたいところだがそれは抑える。
おそらくこれは確実に死亡フラグ。
「私はただ姫をお護りしているだけだ」
そうとは到底思えない。
「それともここから始めてやろうか?」
冗談のつもりだろうが、これが本気に思えてしまうのがこいつだ。
何せ俺は襲われた被害者だ。
「あぁ、こんなにお断りしたい気持ちは初めてです」
ネタで返したが言葉の意味は本心そのものだ。

「お、おい…珠は悪人にあらざるや」
紫が珠をフォローする。
俺だってそう思いたいが腹の傷がそれを阻む。
「それにこいつも平安人だろ」
この世界を知らぬ二人が行ったところで問題は変わらない。
「何だその平安人とは…そんなに文句があるならおまえも来ればよい」
「だから行かねぇって言ってるだろ」
くそ、日本語が通じねぇのか平安人は。
何語で話せば通じるとかそういうレベルじゃねぇ。
「珠はわらわを護り、おぬしは町を案内す…良き話にあらざるや」
得意気な顔をするな。
俺に何の得があるというのだ。
「私達だけで行って騒ぎになってもよいのか?」
くそっ!!
俺としたことが…こいつらに嵌められるとは。

別に俺はこいつの親族でもない。
行きたいなら勝手に行けばいい。
そう言いたいところだった。

だが匿ってる以上俺に責任がないとは言えない。
本当に面倒なものを拾っちまったな…。

何か飲んで気分を落ち着けるか。
そう思い俺は冷蔵庫のドアを開けた。

珠の言葉の棘がわかった。

「…食材切らしてたとこだ。ついでに連れてってやるよ」
珠が不敵に笑う。
謀ったな、珠!
「む。然らば装うべし」
「ちょ、おい…夕方からでいいだろ」
急かす紫を引き止める。
俺はどうして面倒ばかり抱えてしまうのだろうか。

結局紫と珠は支度をしに居間から出て行った。
居間に一人残された俺。
「…シャワーくらいは浴びておくか」
2日間入ってないしな。


シャワーを浴び、支度を終えた俺は居間に戻った。
何に時間がかかるのか、二人の姿は未だ見えない。
先に行ってしまったのではないだろうかと少し焦った。

結局家を出たのは午後2時過ぎだった。
日曜の昼過ぎ、最も街に人が溢れている時間。
その中へ俺はこいつらを連れていく。

とてつもなくでかい不安を抱いて。



第11筆 終
続きます。

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